画像はオンデマンド(本)版の表紙です
かつては軍隊経験をもち、敗戦後は闇商売から転じて造船会社勤めを終えた老主人公は、典型的な大阪庶民。老人のモットーは、「人生のコツは、柳に風、ノレンに腕押し、降参したと見せかけてねちねちと生きることですわ。」だ。七十近くのこの老人と、十六歳の岡本あつ子が繰り広げる奇妙な関係は、べっとりとした人情のなかにひそむ「差別」をあぶり出してくれる。この作品は、小説のプロローグにある鴨長明の『方丈記』の一節のように、人間ははかないが、出会いはもっと美しいと歌っている。
オンデマンド(本)版
小田実全集 小説
『羽なければ』
2011年3月刊行
2,700円(税別)
オンデマンド版の販売は2018年4月末日をもちまして終了しました。